ハーフムーンと腰痛

夕べ、町が深い眠りに陥った頃合を見はからって、散歩に出かけた。
意外と明るい半月が時々薄い雲でぼやけたりまた明るくなったりを繰り返していた。
明るいけど、月夜の月はなんだかもの悲しい。
月にそっと寄り添う星もいるけど、きらびやかな満天の星空と比べると、なんだか寂しげだ。
だから本当は月夜よりも星空の方が好きなんだよなぁなんて思いながら歩いた。
本当は星空がベストなんだけど、今日はそうじゃないんだから仕方がないし、まぁそもそも夜空を眺めながらの散歩なんて悪くないじゃないか。
そういえば、ベストじゃないけどまぁいいか、というあきらめのような慰めのようなフレーズがまるでいかにも自分らしいなぁ。
そんなことを考えていたら、ボクはなんだか急に愉快な心持になって、歩くテンポも軽やかになった。
ポカンと夜空の半月を見上げたまんま歩いた。
 
そして朝、今日は家電量販店の応援に行くことになっていた。
朝準備をしてそろそろ出かけようかというところで、何の前触れもなく、突然腰が悲鳴を上げた。
ぎっくり腰。
その場に倒れこみ、ひとまず横になって様子を見る。
あぁ、これはやっちゃったみたいだなぁ、でも少し休んで何とか動けそうなのでとりあえず仕事に向かう。
幸い、そんなに忙しい感じでもないので、明日は社長の結婚式でもあるし、早めに治療に掛かろうと思う。
この土地に不案内なので、友人の精神科医に電話して近くの整形外科病院を教えてもらい、午前中のうちに診療を受ける。
比較的大きな病院で、とにかく一々待たされる。
一旦は診療室に通されるが、レントゲン撮ってみることになる。
ここでまた散々待たされるんだけど、いざ撮る段になったらなったで、ドランクドラゴン鈴木似のレントゲン技師がめちゃめちゃサービス悪い。
ちょっとばかしイライラを感じながら我慢する。
ひたすら我慢する。
なかなかレントゲン出来上がらないからまだまだ我慢する。
ようやく診療室に呼ばれ、クールな感じの同世代くらいの医者の診察。
特に骨には異常が見られないので、どうしても痛みが続いたり、症状をぶり返すようなら地元の病院でMRI検査を受けるように言われる。
え、そんだけ?
薬を出しますけど、注射も打っときますか?
どうするか自分で決めろという。
腰に注射なんてしたことないし、注射嫌いなので飲み薬だけでいいですと返事。
せめてシップ貼ってくれるとかあってもいいのになぁと思いつつ、昼前だったので多分さっさと終わらせたい感じだったらしい。
こっちは5回も被爆してるんだからもうちょっとサービスしてよ、とか思いつつ支払いを済ませてすごすごと薬局へ薬をもらいにいく。
痛み止めと筋弛緩剤的な薬とモーラステープが処方された。
薬局のおじさんは対照的に妙に愛想がいい。
ボクはすっかりしらけ気分で職場に戻り、薬を飲んでモーラステープを自分で貼った。